(文:八木)
1.介護施設の人材不足が深刻に
日本の介護業界では、人材不足がかつてないほど深刻化しています。厚生労働省の推計によると、2025年には約38万人、2040年には約57万人もの介護人材が不足すると予想されています。
主な原因は、①少子高齢化と②離職率の高さです。
①につきましては、高齢者人口の増加に対して働き手となる若年層の人口は減少していることから、
②につきましては、介護施設は特に離職率の高さが顕著になっています。全産業平均よりも高く、特に勤続1〜3年以内の離職が目立っています。
その背景には、労働環境や待遇の課題と並んで、身体的な負担が深く関わっています。
2.人材不足と腰痛の関係
「職場での腰痛が原因で、泣く泣く辞めました」
介護施設の現場では、こんな声をたびたび耳にします。実際、腰痛は介護職の離職理由として非常に多く、以下のような現場の悩みが見受けられます。

3.腰痛発生率を軽減した事例
こうした中で注目されているのが、「腰痛予防」を軸にした人材定着施策です。
社会福祉法人秦ダイヤライフ福祉会 特別養護老人ホームあざみの里
「腰痛を原因とした離職率が低下」
週1回水曜日勤務時間内の1時間に、ノーリフトケアの技術研修や福祉機器の使用方法に関する情報共有や技術練習を行う研修会を開催し、 全従業員に浸透して、現場で起きている直近の課題や問題も情報共有し、具体的な対応案を提案でき、解決できるようになったとのこと。
社会福祉法人横浜博萌会 特別養護老人ホーム しらゆり園
「介助時の動作が安定」
デイサービス部門では入浴介助業務が立て込み、職員が複数の利用者を同時に介助する必要があり、床面が濡 ぬ れていることがある浴室内での移動が多かった。このため、普通のサンダルでは滑り、転ばないようにこらえるとき に、腰などに無理な力がかかることがあった。
職員に滑り止め付きサンダルを支給。 職員が浴室内で滑り止めサンダルを使用するようになり、滑りを防止し、安全に動けるようになったとのこと。
社会福祉法人秦ダイヤライフ福祉会 特別養護老人ホームあざみの里
外部研修(ノーリフトケア)を受け、かかとのないサンダルやスリッパは足下が不安定になるので、業務中の転倒、つまずき、滑り、姿勢不良等によるケガ、 腰痛につながることを学んだ。
義肢装具士による研修と足の測定を実施し、靴と安定姿勢の重要性を周知し、 動きやすい服装として運動靴の着用を推奨した。
サンダルを履いていた職員が多く、靴を脱がなくても働けるよう、利用者居室 にある常設の畳部屋を廃止し、足拭きマットを設置し、全館に外履きで入れる ようにした。
また、サンダルを履き続ける職員には、給与で支給している被服費の活用を周知した。
それにより、履き替える場面を減少させることで、業務中の移動がスムーズになったとのこと。
この事例から分かるように、腰痛予防の取り組みは、現場の安全性や快適さを高め、スタッフのモチベーションや定着率向上につながる効果的な施策です。
4.お金をかけずにできる腰痛予防対策とは?
「でも、うちは予算がないから…」
そんな声も当然あるでしょう。実は、腰痛予防はお金をかけずに始められる方法もたくさんあります。以下に現場ですぐに取り入れられる対策を紹介します。
現状把握と対策
腰痛になりやすい人、慢性腰痛の人に共通しているのは、腰痛が発生しやすい姿勢になっているということです。
例えば、デスクワーク時に猫背姿勢になっていたり、
立ち仕事で中腰や反り腰になっていたりです。

この2つは、見た目わかりやすいのですが、正面向きの姿勢で両肩や骨盤の左右差について自覚している人は少ないのではないでしょうか?
ましてや、右足と左足の荷重バランスがこんなに違うとか、
どちらかの足が前重心で反対側が後ろ重心になっているなんて、
普段意識していないのではないでしょうか?
腰痛になりやすい人は、足元が不安定になっています。
立ち姿勢において、左右足の荷重バランスが6:4以上差が開くと両肩や骨盤の高低差が顕著になってきます。
この状態が習慣化されると、上体を支えている筋肉や筋膜の硬直や弾力性などの左右差、前後差が大きくなります。



その結果、腰に負担のかかりにくい姿勢を意識していても、入浴介助や移乗介助、排泄介助時に腰痛が発生してしまう人も出てくるのでないでしょうか?
このように、現状を把握するだけでも、腰痛を予防していくのに大きなてがかりになるのではないでしょうか?
では、どうやって現状把握し、対策するのかについて具体的な方法についてお伝えします。
ステップ1)
姿見の前に立ち、両肩の位置が左右均等かどうか?
ステップ2)
姿見の前に立ち、骨盤の高低差は左右に相違はないかどうか?
ステップ3)
立位で左右上体を回してみて、どちらがしにくかったか?
右に回しにくかった人は右足前重心左足後ろ重心の可能性大です。
左に回しにくかった人は左足前重心右足後ろ重心の可能性大です。
ステップ4)
立位で前重心の足だけグーパー運動を10回行ってみてください。
右に回しにくかった人は右足前重心の可能性が大ですので右足のみグーパー運動を、
左に回しにくかった人は左足前重心の可能性が大ですので左足のみグーパー運動を。
ステップ5)
そして、もう一度上体を回して、みてください。
右に回しにくかった人が回しやすくなったり、左に回しにくかった人が左に回しやすくなっていたらOKです。
ステップ6)
姿見の前に立ち、骨盤の左右高低差が少なくなっていれば、さらに良いと言えます。
特に、立ち仕事や持ち上げ動作で腰に負担がかかりやすい人は、このセルフケアを仕事の前に行うだけでも腰痛予防につながることを期待できます。
これなら、お金をかけずに3分以内にできるのではないでしょうか?
限られた勤務時間の中で、腰痛予防につながっていき、人材不足の解決につながっていきましたら幸いです。
もしも、立姿勢の両肩や骨盤の高低差はどうなっているのか?
左右足の荷重バランスについて気になるようでしたら、無料診断をさせて頂きます。
お問い合わせフォームから「無料診断」と書いて返信して頂きましたら、ご対応させて頂きますので、よろしくお願いいたします。
もし記事の内容がよければ、ぜひ下記のボタンをクリックして、ブログ村への投票をお願いします。

にほんブログ村

にほんブログ村

にほんブログ村

にほんブログ村

コメント